お知らせ

  • 自画像を描いた初期作品を振り返る

    2018.07.21

    西嶋豊彦が日本画の世界で注目を集めた初期作品(1992~1996年発表)はすべて自画像です。
     
    人は誰でも思春期や社会に出たときに、多かれ少なかれ悩み、自己を見つめる時期がありますが、西嶋には「自分はなぜ生まれてきたのか?」にはじまる自問自答を繰り返す期間が長くありました。
     
    そのなかで描いた作品が自画像です。6年に渡り描き続けた自画像作品の一部は、当HPの作品ページや、あゆみページでも紹介していますので、ぜひご覧いただければと思いますが、描かれる絵はすべて、「死」の空気が漂っています。
     
    いま、西嶋は20年以上経った当時を振り返り、「自分自身に対しても、他者に対しても、破滅的思考が非常に強かった」と感慨深く話しますが、当時は極限にまで痩せ、いつ人生を終えてもいいというような心理状況のなかで、ただただ、日本画のなかに自己表現を追求したのが自画像作品でした。
     
    その後、ある冬の朝の出来事をきっかけに、西嶋は「生」へと目を向けるようになり、描く世界も変わっていくのですが、初期作品で追求した微に入り細に穿つ筆致は現在にいたるまで変わりません。
     
    西嶋はよく、ひとつの対象物を描くとき、何十枚、何百枚とスケッチをしているうちに、その対象と対話できるようになり、やがて一体感が生まれたときに作品が誕生すると言いますが、これは、初期の自画像作品を描くなかで確立したスタイルです。このHPを制作するにあたり、自画像作品と久々に対面し、「自画像を描いていたときは、本当に何度も何度も自問自答繰り返したので、物事を表面的に見るのではなく、対話ができるようになった。大切だと思うようになったのだと思う」との一言は、とても印象的でした。
     
    西嶋豊彦事務所
    竹田陽平

  • 日本画に邁進した理由

    2018.07.10

    西嶋は高校卒業後、一度会社員をしてから美術大学へ入学し、本格的に絵画をはじめています。それは、絵を学びたい、描きたいという自分でも抑えきれない強い気持ちがあったからなのですが、入学前は日本画というものをよく知らなかったといいます。ただ、そんな思いを抱えていたときに、当時、勤めていた会社の上司に相談したところ、「日本人だから、日本画をしてみたら?」といわれたことがきっかけで日本画を学びはじめ、次第に、その奥深さに熱中するようになり、気づけば今日に至るまで20数年、その道に邁進しています。
     
    なぜ西嶋が日本画がを描き続けたのかといえば、まず日本画に使用する岩絵具の美しさに魅せられたこと、そして余白の美を愉しむといった自身の美的感覚にしっくりきたことなど、いろんな理由がありますが、日本画の画材が主に自然素材からつくられていることが、今となっては一番大きな理由だったのかもしれない…といいます。
     
    これは、西嶋が琵琶湖にほど近い湖北町(長浜市)という自然豊かな環境で育ち、自然に近しい気持ちがあるということや、彼の作品の根幹にある、生や死、光、闇、ぬくもりといったテーマを表現するときに、自然素材を使う日本画の表現がもっとも自身の表現にしっくりきたということでもあり、それがゆえに、日本画、日本美術の豊かさを学び、日本画に邁進することとなったのです。
     
    それから20余年、西嶋は日本画家として活動しながら、近年は海外で作品を発表する機会に恵まれ現代アート作品も創作していますが、現代アート制作においても日本で伝統的に使われてきた自然素材を使いたいという想いは変わっていません。
     
    前回ご紹介した、和紙の濃淡(厚みの凹凸)で絵を描く、「絵和紙」はまさにこの想いと合わさるものですし、西嶋の創作活動において自然素材を用いること、活かすことは主題となっているのです。
    ※絵和紙、現代アート作品は、こちらからご覧いただけます
     
    西嶋豊彦事務所
    竹田陽平

  • 高知大丸 グループ展「土佐の紙に描く 日本画新作展2018」

    2018.06.26

    このたび、高知大丸で開催される日本美術のグループ展「土佐の紙に描く 日本画新作展2018」に出品します。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。

     

    展示期間:7月4日(水)~10日(火) 10:00〜19:30 (最終日のみ 10:00〜16:00)

     

    高知大丸本館5F催会場
    〒780-8566 高知県高知市帯屋町1丁目6番1号 [地図]
    Tel:088-822-5111(代表)
    Web:https://www.kochi-daimaru.co.jp/event/cat14/2018.html

  • 昨秋発表した「絵和紙」作品(障子アート)のこと

    2018.06.25

    先日、和紙の厚みの差で絵画や模様を浮かび上がらせる透かし和紙「絵和紙」についてご紹介しましたが、今回は、その絵和紙作品についてお話します。
     
    昨秋、西嶋は京都・泉涌寺と東本願寺渉成園で、初めて絵和紙のみ障子作品を奉納しました。
    ※掲載している写真は、11月に泉涌寺で撮影したものです。
     
    みなさんもご存じのように、障子に貼られる和紙といえば、白地で向こう側は見えないものが使われますが、西嶋は、障子和紙に背景が透ける「絵和紙」を使い、さらには、障子の向こうの景色とも合わさて見られような表現ができればと制作にとりかかりました。
     
    泉涌寺、東本願寺渉成園ともに、中庭に美しい紅葉があることから、紅葉が見える部屋の障子に紅葉を描いた絵和紙を貼って、写真のように「自然の紅葉」と「和紙の紅葉」のコラボレーションを実現しました。
     
    この障子アートをご覧になった方には「繊細できれい…」「透かし模様が絵になっているなんて」などと関心を寄せていただきました。このような好意的なお声がけはとても励みとなり、現在も、この絵和紙を使った新たな作品づくりに挑戦しています。
     
    今年は、9月に催行します日本橋三越の個展でも披露させていただく機会がありますので、その際にまたご紹介できればと思います。
     
    西嶋豊彦事務所
    竹田陽平

  • 素材を追求すること ~和紙にこだわり続けてきた7年間~

    2018.06.12

    みなさんは日々の暮らしのなかで「これは便利なものだなぁ…」、「こんなものがあったらいいのに…」などと、モノについて思うこと、考えることはありますでしょうか?
     
    現代の日本は、モノにあふれた時代だといわれますが、そんな時代にあっても、新しい商品は誕生しています。きっと今、この時間も、製作現場では、素材や製法について研究・開発が行われているでしょうし、昔も今も、作り手の気質というのは変わらないのだと思います。
     
    このことは、アートの世界でも同じです。
     
    みなさんはアーティストと聞くと「表現者」としてのイメージを思い浮かべる方が多いと思うのですが、美術分野のアーティストは表現者であると同時に、表現のために使用する道具や素材について考える「研究者」の一面を持っています。
     
    西嶋も素材について考え、追求してきた作家のひとりです。
     
    このブログに掲載している作品写真(花神 -アジサイ-)は、日本美術、日本画において伝統的に使われてきた素材「和紙」を用いていますが(白の模様部分が和紙です)、この和紙は紙の濃淡(厚み)の差で絵画を浮かび上がらせています。
     
    7年前、西嶋は自身の表現を追求するなかで、自ら和紙を紙漉きしようと思い立ち、各地の工房を巡り、話を聞き、紙漉きを学び、自宅に楮(こうぞ)の木を植え、和紙を漉きはじめました。そして、和紙で絵画的表現ができないかを考え、通常の紙漉きでは用いない技法を使って新たな和紙を生み出しました。(この透かし和紙を私たちは「絵和紙」と呼んでいます。)
     
    西嶋は、この絵和紙のほかにも、岩絵具、胡粉、金箔、漆など、日本の自然素材から生まれた素材についても過去に学び、新しい使い道がないかと日々探っています。こうした活動についても、またの機会にご紹介できればと思います。
     
    西嶋豊彦事務所
    竹田陽平