みなさんは日々の暮らしのなかで「これは便利なものだなぁ…」、「こんなものがあったらいいのに…」などと、モノについて思うこと、考えることはありますでしょうか?
現代の日本は、モノにあふれた時代だといわれますが、そんな時代にあっても、新しい商品は誕生しています。きっと今、この時間も、製作現場では、素材や製法について研究・開発が行われているでしょうし、昔も今も、作り手の気質というのは変わらないのだと思います。
このことは、アートの世界でも同じです。
みなさんはアーティストと聞くと「表現者」としてのイメージを思い浮かべる方が多いと思うのですが、美術分野のアーティストは表現者であると同時に、表現のために使用する道具や素材について考える「研究者」の一面を持っています。
西嶋も素材について考え、追求してきた作家のひとりです。
このブログに掲載している作品写真(花神 -アジサイ-)は、日本美術、日本画において伝統的に使われてきた素材「和紙」を用いていますが(白の模様部分が和紙です)、この和紙は紙の濃淡(厚み)の差で絵画を浮かび上がらせています。
7年前、西嶋は自身の表現を追求するなかで、自ら和紙を紙漉きしようと思い立ち、各地の工房を巡り、話を聞き、紙漉きを学び、自宅に楮(こうぞ)の木を植え、和紙を漉きはじめました。そして、和紙で絵画的表現ができないかを考え、通常の紙漉きでは用いない技法を使って新たな和紙を生み出しました。(この透かし和紙を私たちは「絵和紙」と呼んでいます。)
西嶋は、この絵和紙のほかにも、岩絵具、胡粉、金箔、漆など、日本の自然素材から生まれた素材についても過去に学び、新しい使い道がないかと日々探っています。こうした活動についても、またの機会にご紹介できればと思います。
西嶋豊彦事務所
竹田陽平