画家「西嶋豊彦」のあゆみ

西嶋豊彦の作品は、自身の哲学的成長、各時期における精神性または造形性への追求が反映されています。「変化していくことは、生きているということ」と話す西嶋の作品について、過去作品から現在にいたるまで発表した作品をテーマに分けてご紹介します。


◎死を見つめる(1992~1996)

西嶋豊彦の画家としての出発は自画像にあります。大学卒業後、自分がなぜ生まれてきたのか、どんな役割を持つのか、自問自答を繰り返していた西嶋は、自画像の制作に取り組んでいました。さらに2カ月間インドを旅したことで、自問自答は一層強まり、破滅的思考に傾倒していきます。この思考は、この時期とどまることはなく、体重は一時36キロまで落ち、死を身近に感じながら自画像を描き続けました。

  • 朝も昼も夜もない結末
  • あの赤いマド

◎自然の摂理を見つめる(1996~2008)

1996年冬、破滅的思考は終止符を打ちます。ある夜中、自宅の縁側で夜通し考え事をしているうち、ふと気づいたら、指先に朝の太陽の光が当たっていて、自分がこんなにもわずかな光に、こんなにも温もりを感じているということ、さらには、温もりが人にとって大切であるという気づきを得ます。その感動はそれまでの破滅的思考を一転させ、西嶋は命の宿る自然物へと目を向けるようになります。以降、生から死へ巡り巡る自然の摂理を描く、花を魂のように描く、生き物の命を燃やすエネルギーを描くなど、自然と対話、共鳴しながら、対象物の目には見えないものを重視した表現した作品を発表しました。

  • 空巡る
  • 湧き水のように
  • つながり      

◎造形を見つめる(2009~)

自然に寄り添い、目には見えない精神性を8年に渡り追求した結果、絵画としての訴求力が全般的に弱まった作品が増えてきました。そこで、意図的に精神性を追求した絵画表現をやめて、自身が惹かれる造形物、デザインを探求し、対象物の美を微に入り細にうがって描く、ときにはその美の魅力を倍加させるなど、造形美を追求した表現へと振り切ります。

  • いまむかしみらい
  • Luminous
  • 花神 -紫陽花-

◎世界の中の日本を見つめる(2012~)

2011年、初の海外個展(パリ)をきっかけに、西嶋は日本の思想、日本画表現、素材をあらためて見つめ直します。この頃から、日本画に用いる和紙作りに関心を持ち、全国の和紙工房を訪ねて素材や製法を学び、自分自身で紙漉きを行うようになります。紙の厚みの差によって絵画的表現する西嶋のオリジナル和紙「絵和紙」は、この過程で生まれたものです。絵和紙は、これまで日本画、時に漆と組み合わせた作品に使用してきましたが、今もなお、どのように活かすか試行錯誤を重ねています。

  • 絵和紙 -紅葉図-(御寺泉涌寺 奉納作品)
  • Birth
  • 目玉図

◎神羅万象の調和を描き、つながりの象徴を表現する(2023~)

「変幻自在・和の神髄」を追い求めた結果、伝統的な技法をベースに令和の「京琳派」を継承。日本の美とは「命ある素材を生かし、つながる事」と語る西嶋は、半導体という現代社会を象徴するモチーフで「伝統×革新」を描き、独自の切り口で日本美を表現してゆきます。自然の中に削ぎ落された美の造形を見出してきた京琳派の先人たちともつながり、更に時空を超えて未来へとつなぐ、未来創造画でありたいと願っています。

  • 半導体風神雷神図(風神)
  • 半導体風神雷神図(雷神)
  • 半導体富士紅白梅図