日本画に邁進した理由

2018.07.10

西嶋は高校卒業後、一度会社員をしてから美術大学へ入学し、本格的に絵画をはじめています。それは、絵を学びたい、描きたいという自分でも抑えきれない強い気持ちがあったからなのですが、入学前は日本画というものをよく知らなかったといいます。ただ、そんな思いを抱えていたときに、当時、勤めていた会社の上司に相談したところ、「日本人だから、日本画をしてみたら?」といわれたことがきっかけで日本画を学びはじめ、次第に、その奥深さに熱中するようになり、気づけば今日に至るまで20数年、その道に邁進しています。

なぜ西嶋が日本画がを描き続けたのかといえば、まず日本画に使用する岩絵具の美しさに魅せられたこと、そして余白の美を愉しむといった自身の美的感覚にしっくりきたことなど、いろんな理由がありますが、日本画の画材が主に自然素材からつくられていることが、今となっては一番大きな理由だったのかもしれない…といいます。

これは、西嶋が琵琶湖にほど近い湖北町(長浜市)という自然豊かな環境で育ち、自然に近しい気持ちがあるということや、彼の作品の根幹にある、生や死、光、闇、ぬくもりといったテーマを表現するときに、自然素材を使う日本画の表現がもっとも自身の表現にしっくりきたということでもあり、それがゆえに、日本画、日本美術の豊かさを学び、日本画に邁進することとなったのです。

それから20余年、西嶋は日本画家として活動しながら、近年は海外で作品を発表する機会に恵まれ現代アート作品も創作していますが、現代アート制作においても日本で伝統的に使われてきた自然素材を使いたいという想いは変わっていません。

前回ご紹介した、和紙の濃淡(厚みの凹凸)で絵を描く、「絵和紙」はまさにこの想いと合わさるものですし、西嶋の創作活動において自然素材を用いること、活かすことは主題となっているのです。
※絵和紙、現代アート作品は、こちらからご覧いただけます

西嶋豊彦事務所
竹田陽平